普通自動車の登録台数を発表している「自販連(一般社団法人 日本自動車販売協会連合会)」と、軽自動車の登録台数を発表している「全軽自協(一般社団法人 全国軽自動車協会連合会)」の統計データをもとに、新車登録台数と中古車登録台数の推移を紹介しています。

今月の核
USSの中古車オークション成約単価が前年同月比+14.6%の122万1千円と8カ月連続で前年を上回り、過去最高水準に近い。一方、4月の新車販売は環境性能割廃止に伴う登録先送りで前年比+9.1%と急回復したが、実需の回復ではない。核心は「新車登録が増えても中古車供給が潤沢にならず、B2B相場を押し下げない」構造的需給タイト化の継続である。仕入れ価格の高止まりは少なくとも2026年度上半期まで続く可能性が高い。
Section 1: 今月のマクロ環境
新車市場 ― 環境性能割廃止の先送り効果で登録車が急増
2026年4月の国内新車販売台数(登録車+軽)は37万3,952台、前年同月比+9.1%と4カ月ぶりに増加した(自販連・全軽自協発表、日刊自動車新聞2026年5月1日報道)。
しかしこの伸びの主因は、3月末の環境性能割廃止を見据えた登録の先送りにある。登録車は25万5,370台(同+17.6%)と14カ月ぶりの2桁増を記録したが、内訳を見ると普通乗用車が14万5,773台(同+13.0%)、小型乗用車が7万7,596台(同+24.9%)と小型車の伸びが顕著だった(自販連車種別登録台数統計)。トヨタブランドの登録車が前年比+25.2%の13万8,800台と全体をけん引する一方、他メーカーの伸びは限定的だった。
対照的に軽自動車は11万8,582台(同-5.7%)と5カ月ぶりに減少。軽乗用車が9万1,447台(同-4.8%)、軽貨物が2万7,135台(同-8.9%)と両セグメントで落ち込んだ。軽は環境性能割の対象外に近い税体系にあり、廃止の恩恵が登録車ほど大きく受けず、むしろ3月への前倒し登録の反動減となったと見られる(全軽自協速報)。
中古車オークション(B2B) ― 成約単価は8カ月連続で前年上回る
USSの2026年4月月次データによると、平均成約単価は前年比+14.6%の122万1千円、成約率は64.2%(前年61.1%、+3.1ポイント)、出品台数は34万8,991台(同106.4%)、成約台数は22万4,073台(同111.8%)だった(USS月次データ)。成約台数の伸びが出品台数を上回る需給構造が続いている。
AA主要4事業者の4月総出品台数は63万1,698台(前年比+3.4%)で2カ月連続プラスとなり、4社すべてで成約単価が2桁増となった(日刊自動車新聞2026年5月15日報道)。中東情勢の悪化で一時的な影響が懸念された輸出需要だが、同紙(5月13日報道)は「輸出事業者の仕入れ意欲は衰えていない」と指摘している。
Section 2: 今月の核の深掘り ― 多面的検証
「新車急増」の実像:税制要因を除いた需給は横ばい
4月の新車市場+9.1%は一見回復基調だが、環境性能割廃止による登録先送りが大半である。この読みを裏付ける根拠は3つある。
第1に、3月の反動減がなかった点。本来3月は決算期の駆け込み需要で年間最大の月になるが、2026年3月の新車販売は前年比-2.9%と減少していた(日刊自動車新聞既報)。これは環境性能割廃止を見据え、3月中に納車・登録されるべき車両の手続きを4月にずらした結果であり、3月+4月の合計で平準化すれば実需はほぼ横ばいと見られる。
第2に、軽自動車が-5.7%と登録車と反向きに減少した点。軽は登録車と異なる税体系にあり、環境性能割廃止の影響が登録車ほど大きく受けず(軽の税額は登録車の3%に対し2%)、むしろ3月への前倒し登録の反動減となった。軽市場の本来の需要は横ばい〜微減と推定される。
第3に、トヨタ1社依存構造。登録車の+17.6%の大半はトヨタブランドの+25.2%(13万8,800台)によるもので、他メーカーの寄与は限定的。ノア/ヴォクシーの海外並行生産による受注上限撤廃や、長期の生産制約から解放されたランドクルーザーの反動増が、トヨタだけの特殊要因という側面がある。
なぜ新車増に中古相場は反応しないのか
クラシカルなロジックでは、新車販売拡大→下取り増→中古供給増→相場下落の連鎖が期待される。しかし4月のUSS成約単価+14.6%はこの連鎖を打ち破っている。理由は複合的だ。
第一に、登録先送りはタイミング調整であって下取り増ではない。環境性能割廃止に伴う先送りは、3月中に納車・登録されるべき車両の時期を4月にずらしたに過ぎない。下取り車が追加で発生したわけではなく、4月の中古車供給量に直接的な増加効果はない。
第二に、輸出需要が継続的に国内相場を下支えしている。円安基調が続くなか、海外バイヤーは国内業者より高い価格での仕入れが可能だ。中東情勢の悪化が一時的な影響を与えた時期もあったが、輸出事業者の仕入れ意欲は衰えていない。AA主要4社すべてで成約単価が2桁増となったことは、USS固有ではなく業界全体の現象であることを示す。
第三に、軽自動車の新車販売減少が将来の中古供給を束ねている。軽新車が主要3社揃って前年割れしている状況は、将来の中古軽の供給減少を示唆する。軽のタマ不足は地方販売店の収益に直結する構造であり、中古軽需給のタイト化は今後数カ月にわたり続く可能性がある。
Section 3: 車種・ボディタイプ動向
登録車通称名別 ― 供給正常化の反動増が目立つ
自販連の通称名別ランキング(4月確報)では、ランドクルーザーが前年比+275.9%の9,467台で前月35位から一気に7位に躍進(自販連発表)。長期間続いた受注停止から生産・納車が正常化した反動増であり、同時期にbZ4XやリーフBも前年極小基数からの供給正常化で大幅増となっている。この反動増がいつまで続くかは、新車供給の正常化が一巡した後の持続性に依存する。
トヨタのコンパクト系が好調で、ルーミーが前年比+208.4%の1万2,192台で2位、ライズが+191.6%の1万1,494台で3位と急伸した。前年の供給制約からの反動が続いていると見られる。一方、カローラは前年比77.2%と伸びが鈍く、環境性能割廃止という外的ショック下でも需要に個体差が出ている。
軽自動車 ― スペーシアが首位奪取、主要3社が前年割れ
軽自動車通称名別ではスペーシアが前年比101.6%の1万3,546台で首位、N-BOXが85.1%の1万2,659台で2位、タントが95.4%の8,516台で3位の構成。N-BOXの前年割れは前年が高水準だった基数効果によるもの。軽全体が前年比-5.7%と低迷したが、これは登録車への需要シフトが主因。
メーカー別では全軽自協速報によると、スズキが4万2,559台(シェア35.9%)、ダイハツが3万7,776台(31.9%)、ホンダが1万7,808台(15.0%)で、主要3社がそろって前年を下回った。日産は軽乗用車で前年比+21.4%と健闘しており、新型ルークスのフルモデルチェンジ効果が継続していると見られる。
輸入車
JAIAの4月速報ではメルセデス・ベンツがブランド別首位を維持(日刊自動車新聞2026年5月21日掲載)。輸入車セグメントの安定性が見られるが、今月の核とは距離があり詳細は次回に譲る。
燃料別
自販連の燃料別4月確報は公表前だが、環境性能割廃止の影響で4月はガソリン車比率が一時的に上昇した可能性がある。電動車比率の動向は確報公表後、一過性か構造的かを判断する必要がある。
Section 4: 今月の示唆
- 4月に高値で仕入れた在庫は6月までの回転計画を確認する
5月の新車市場は環境性能割先送りの反動で伸び悩む公算が大きく、4月に122万円台で仕入れた在庫の価格見直し判断は6月第1週までに行うのが安全。 - 軽自動車の仕入れは中長期的に見直しを開始する
軽新車の主要3社そろっての前年割れは、数カ月後の中古軽供給減少を示唆する。軽を主力とする地方店舗は、中古軽の確保に向けた買取強化を6月中に動き出すべき。 - ミニバン中古相場の動向を6月から注視する
トヨタのノア/ヴォクシー海外並行生産による受注上限撤廃と、アルファードの供給増が新車供給の正常化を通じて中古ミニバン市場に緩和圧力を与える可能性がある。4月に急増した新車が半年後の下取りに出る時期を視野に入れて動向を追う。
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